部長のすごい愛、自分に素直になることが人を救うということ 『おっさんずラブ』によせて

おっさんずラブ』!!!

すごく面白かったです!ね!

 

 

正直言うと最初はちょっと距離を置いて観ていました。
主人公の春田に思いを寄せる黒澤部長のキャラクターの描き方、というか、

愛情表現があまりにインパクトがありすぎて、
その描写はなんなのか?どうなのか?と思っていた部分がありました。
いやいやしかし、見ていくうちに、
差別的に見ていたのは私自身だったんだな、と。

それはおっさんずラブの重要なテイストであると同時に、

部長の ただただ「自分に素直」という表現であった。

そしてそれが、

このドラマに通底する、本当にすばらしい表現でした。

 

・自分に素直になって世界が動き出す

 

物語の始まった頃、

登場人物たちの職場は仲も良く、成績も上げていて、

一見順調のように見えます。

しかし実は皆、

自分の気持ちにどこか蓋をしていたり、もんもんとしているのです。

主人公の春田はいわゆるポンコツ…何をしてもうまくいかない。

黒澤部長は女性と結婚しているけれど本当はゲイで妻にそれを隠し、

春田への恋心も胸にしまっている。

牧もまた、ゲイであることに後ろめたさを感じて、春田への気持ちを表に出すまいとして…。

 

 

・自分に素直であると人も素直になる

 

それが、部長が「自分に嘘をつくのはやめる!」と

自己表現をし始めて、

なかなかインパクトのある表現なわけですが、

それでドラマは始まり、

予定調和していた場は壊れ、

事態はぐるりぐるりと動き、

皆がみな、自分のほんとうの気持ちを表現するようになります。

 

 部長のどストレートかつ大胆な愛情表現により、

牧もまた自分の気持ちを隠せなくなる。

春田は人に愛されることと愛することを知る。

他のキャラクターたちも、「自分も、」とどんどん

隠していた ”素直な気持ち” を表現してゆく。

 

 

・部長のすごい愛

 

部長の決断、そして行動はものすごい勇気です。

長く連れ添っていた妻と別れること…

これまでの暮らし、

妻は自分のことを好いてくれているし、

自分だって決して嫌っているわけではない。

そんな相手を傷つけてしまうのがわかっている、

でも、やっぱり、という決断。

そして好きな相手、春田に、

あんなにも惜しみなく愛情を表現すること。

嫌われるかもなんて迷いは微塵もなく。

清々しいものです。

 

そして最終回の、

部長の春田への一連の行動がすばらしいのです。

部長は、ぼろぼろになっている春田を見ていられなかった。

少しずつ生活を取り戻させ、

仕事の面でもきっといっぱい支えていて、

人として 社会人として 自信をつけさせて

春田を一人前にした1年。

上司であり、兄や親のようでもあり、妻のようでもあり。

けれど…春田のことを良く見ているから、

彼のほんとうの思いにも気づいている。

もう少しで自分のものにできそうだった春田を手放す。

牧のように自分で早合点して決めるのでない、

「相手の幸せを思った」行動をする。

自分の気持ちをごまかしている春田を自分のものにする、なんて、

「自分に素直に」 と決めた、

愛の人である部長には、できなかった。

なんて素敵な人なんでしょう。

 

・自分に素直になることが人を救うということ

 

一見、調和がとれていたように見えた世界が、

ひとりの「素直さ」の決断により、

みんなの「素直になる勇気」を広げて、みんなのことを救っていく。

おっさんずラブ』から、

私はそんなメッセージと勇気を受け取りました。

 

 

 

役者さんが皆思いをこめて演じていることが伝わったし、

細かなアドリブや小道具のユーモアも作り手の愛を感じました。

こんな心がやさしくなるドラマが見られてよかったな。

まだまだこんな物語が見られるんだ。

テレビもいいものだなあ。